製造物責任法(PL法)と取扱説明書の警告表示

2018年11月6日

 取扱説明書のPL対策について、よくお問合せやご依頼をいただきます。PL法については、「第1回 製品安全と取扱説明書の役割」で触れているのでそちらもご確認ください。取扱説明書のPL対策とは何でしょうか? 万一、製品事故が起こって訴えられたときに敗訴するリスクを低減したい、という意味合いで伝われることが多いようです。「PL対策とは警告表示をしてリスクを回避すること」くらいの認識だと思います。あながち間違っていませんが、今回はもう一歩踏み込んで解説していきます。

製品事故はなぜ起こるか

 製品事故が起こる理由は、製品の欠陥(設計上の欠陥、製造上の欠陥)によるものと、製品の誤使用によるものがあります。つまり製品の問題と人の問題です。製品の誤使用は、指示・警告上の欠陥(記載漏れ、記載ミス、記載が不十分)があるか使用者が取扱説明書などの指示に従わなかったときに発生します。

取扱説明書によるPL対策とは

 取扱説明書では、製品寿命の間で発生するすべての「正しい取り扱い方法」と「禁止された取り扱い方法」を記載しなければなりません。具体的には、製品の開梱から、輸送、設置、調整、操作、保管、点検・保守、廃棄までの全てのライフサイクルの中で、「正しい取り扱い方法」と「禁止された取り扱い方法」を網羅することを意味します。ただし、ターゲットユーザーが異なる場合は、説明書を分離して提供しなければなりません。たとえば、製品の設置者と操作者が異なる場合は、設置マニュアルと操作マニュアルを分けて作成します。

 PL対策を考慮するには、警告表示のみでなく取扱説明書に書かれているすべての指示に欠陥がないことが求められるのは言うまでもありません。製品の誤使用は、正しい取り扱い方法が明確に伝わらない場合にも発生しますので、決して警告表示のみを対象にしてはいけません。

警告表示の仕方

 どの項目を警告するかは、リスクアセスメントとリスク低減方策の一連の流れの中で決定します。リスクアセスメントとリスク低減方策については、「第2回 リスクアセスメントと取扱説明書」をご覧ください。

 警告表示は、指示事項/禁止事項を先に書き、その理由(どのようなリスクがあるか)は後で書きます。具体的には、「手がはさまれて重傷を負うおそれがありますので、運転中は機械の中に手を入れないでください。」と書くのではなく、「運転中は機械の中に手を入れないでください。重傷を負うおそれがあります」と書きます。

ちなみに、「恐れ」は恐怖を示す場合に漢字で書きますが、懸念を示す場合は「おそれ」とひらがなで書くのがルールです。

 

危険(Danger)、警告(Warning)、注意(Caution)のどのシグナルワードを使用するかは、リスクアセスメントに連動して決定しますが、それぞれの定義は以下のとおりです。

■国内の規格(JIS)
JIS S 0137:2000 消費生活用製品の取扱説明書に関する指針
危険:重大なリスクに対する注意の喚起を意図する。
警告:中程度のリスクに対する注意の喚起を意図する。
注意:軽度のリスクに対する注意を喚起する。

JIS S 0101:2000 消費者用警告図記号
危険:消費者が製品の取扱いを誤った場合,死亡又は重傷を負うことがあり,かつその切迫の度合いが高い危害の程度。
警告:消費者が製品の取扱いを誤った場合,死亡又は重傷を負うことが想定される危害の程度。
注意:消費者が製品の取扱いを誤った場合,傷害を負うことが想定されるか又は物的損害の発生が想定される危害・損害の程度。

■国際規格(ISO)
ISO 3864-2:2004 - Graphical symbols -- Safety colours and safety
危険:回避しないと、死亡または重篤な傷害に至る高レベルのリスクを伴う危険事象を示す。
警告:回避しないと、死亡または重篤な傷害に至ることがあり得る中レベルのリスクを伴う危険事象を示す。
注意:回避しないと、軽度または中度の傷害に至る低度のリスクを伴う危険事象を示す。

■アメリカの規格(ANSI)
ANSI Z535.4 American National Standard for Product Safety Signs and Labels
危険:回避しないと、死亡または重症を招く差し迫った危険な状況を示す言葉。
警告:回避しないと、死亡または重症を招く可能性ある危険な状況を示す言葉。。
注意:回避しないと、軽傷または中程度の障害を招く可能性がある危険な状況を示す言葉。

いずれもほぼ同じ定義となっていますが、「注意」に関しては、JISでは物的損害の発生を含め、国際規格では「人がけがをする場合に限定」して使用していることにご留意ください。多くの国内メーカーはJISの定義を採用していますが、海外への輸出(または輸出の可能性)がある場合は国際規格を採用することをお勧めします。

ライター


山口 純治

山口 純治

ブランディング、商品プロモーション、製品マニュアル、販売店や社員トレーニング、社内コミュニケーション改善 など、さまざまな情報伝達シーンにおいて「コミュニケーション設計」の支援をしている。主な活動として、コンサルティング、セミナー、トレーニング・研修、会議やプロジェクトのファシリテーションなどの自立支援活動や、Webサイト・カタログ・パンフレット・動画・マニュアルなどの企画・制作などがある。

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