コミュニケーションデザイン|引き出す技術を身に着ける

2019年1月20日

 これまでの記事で、どのようなものを可視化するべきかについて書いてきました。可視化は、まず自分の考えや他者の考えを整理するのに役立ちます。そして複数人と、場所や時間を超越して情報を共有するためにとても有効です。可視化することで、脳内のみで思考をめぐらすよりも多くの脳部位を刺激し、思考を活性化して情報整理を助けます。自分でも気が付かなかった思考の抜け漏れや矛盾などを発見するのに役立つでしょう。
今回は可視化の技術について説明します。可視化は、「引き出す」技術と「整理する」技術に支えられています。まずは、「引き出す」技術から始めましょう。

■可視化|引き出す技術

「引き出す」とは、隠れている情報、見えない情報、声にならない声など、ほっておくと出てこない情報を引っ張り出す作業を意味しています。志、意見、意図、解釈、理由、前提、価値観、感情など…です。まず、言語化する作業から始めます。たとえば、考えが整理されていなくても、答えが出ていなくても、とにかく声に出し(出してもらい)、それらを紙に書き出していきます。そして書き出したコトバについて「そう思う理由は何か」「これ以外に似たような例はないか」などと質問を投げかけて、さらに深掘りしたり、関連するコトバを引き出したりしていきます。

私たちは他人の欠点はよく目に入りますが、自分のクセにはあまり気が付きません。人の目は常に外(自分以外)に向いているからです。思考を書き出して可視化することで、客観視することができるようになり、発想が広がったり、見落としている点や疑問点、あるいは矛盾点が明確になったりして、思考が整理されていきます。

思考が具体化されていない「もやもやっと」した状態のときに「引き出す技術」を使うと、情報を整理するのに効果的です。

■意識の外を意識する。

 見えない情報を引き出すためには、まず見えないものがあることを認識し、注意を払うことが大切です。通常私たちは、見えるもの、聞こえること、触れることができるものなど五感で認識できるものに焦点を当てて生活しています。逆に言うと、五感で認識できないものは「意識の外」にあるわけです。

私たちは、意識して見えないものを見るように努める必要があります。

つまり、「起こっている事象(見えるもの)はすべて、何かしらの因果関係のつながりの中で生じている」という考えに基づいていて、事象の表面だけに目を止めるのではなく事象の原因に関心を寄せる態度を持つと言うことです。物事の事象よりも、その事象を生み出す本質や原理原則に価値を置き、また人の言動よりも人の心や感情に価値を置く(興味を持つ)習慣を身に着けると、「引き出す技術」は強化されていきます。

たとえば、自分に対してある人が発したコトバに反応するのではなく、「なぜそのような発言をしたのか」、「発言の背後にどのような前提が隠れているのか」、「どのような気持ちで言ったのか」などに関心を持ち探索します。コトバに限らず、人の行動に対しても同じアプローチができます。会議のときでも、参加者の発言そのものではなく、発言の背後にある前提を確認するようにすると、深い領域で意識合せや合意形成ができるでしょう。

また、当たり前だ(検討する余地はない)と思われていることに対しても、「本当に当たり前なのか」、「他の業界(他の国)ではどうなのか」、「何が前提にあるのか」「10年後も当たり前なのか」という問いかけをする習慣をつけましょう。当たり前というコトバで思考停止に陥らないで、本質を掘り下げて自分のコトバで理解する習慣をつけるのです。「当たり前」「常識」と言うコトバは使わないように意識しましょう。

これは実に効率の悪い作業と言えます。

効率の良さを追求する現代社内において、多くの人は本質や原理原則を掘り下げて理解しようとする非効率な作業を好みません。人が集まると、声の小さな人の意見は無視される…ということはよくあることでしょう。声の小さな人や声を上げない人の意見を聞くことは、効率が悪い上とてもメンドクサイからです。

しかし本質や原理原則を掘り下げて探求することは、新たな可能性を見出すという点でとても効果的な手法です。今までの方法では切り開けない「何か」を切り開くためには有効な手法なのです。「引き出す技術」というのは、物事の本質や原理原則を探索する技術と言い換えることができるでしょう。

繰り返しますが、引き出す情報はその時点で整理されている必要はありません。整理されていない情報にこそ、「価値ある何か」が隠されている・・・そのように考えると良いと思います。

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ライター


山口 純治

山口 純治

ブランディング、商品プロモーション、製品マニュアル、販売店や社員トレーニング、社内コミュニケーション改善 など、さまざまな情報伝達シーンにおいて「コミュニケーション設計」の支援をしている。主な活動として、コンサルティング、セミナー、トレーニング・研修、会議やプロジェクトのファシリテーションなどの自立支援活動や、Webサイト・カタログ・パンフレット・動画・マニュアルなどの企画・制作などがある。

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