コミュニケーションデザイン|引き出す技術(良い質問は未来を開く)

2019年3月9日

 可視化は、「引き出す」技術と「整理する」技術によって構成されています。今回からは、見えないものを可視化する「引き出す技術」について解説していきます。見えないものというのは、見えないために対処できなかったり評価できなかったりしますが、見えないからと言って存在しないわけではありません。見えないものを可視化すると、想像以上に価値あるものを発見できるかもしれません。引き出す技術を身に着けて、未発見の価値あるものを見つける機会を広げましょう。

 

■可視化|引き出す技術(質問技術)

「引き出す技術」は、原理原則や人の言動を生み出す感情に着目する態度と、質問技術に支えられています。その中でも、質問技術は世界をひっくり返すほどパワフルです。これは決して大げさではありません。質問とは考える行為そのもので、人の思考は質問によってスイッチが入り稼働を始めるのです。ぜひ意識していただきたいことは、どのような質問を投げかけるかによって得られる答えがガラッと変わるということです。その答えは発言や行動となって現れ、そして結果につながります。

たとえば、部下が指示どおりに動かなかったとき、「なぜ、彼は言うことを聞かないんだろうか(イライラした気持ち)」という問いかけをするか、「彼が成果を上げるために適した方法は何だろうか」という問いかけをするかで、その後の展開に大きな違いが生まれると思いませんか? 悪い質問は未来の可能性を閉ざし、良い質問は未来を開きます。しっかりと質問技術を身に着けることで、未来の可能性を広げることができるようになるのです。

 

すべての思考は、前提によって制御されている。

 

未来の可能性を広げるための質問技術。それは、本質を追求するマインドと他社貢献マインドに支えられています。マインドというと、「また精神論か」と言われそうですが、精神論ではありません。端的に言えばマインドとは思考の土台、つまり質問の裏に潜んでいる前提を意味します。思考の土台を戦略的に改革して、好ましい未来を手に入れるきっかけを作ろうというのが私の提案です。

前述の例で、「なぜ彼は‥」と問う人は「上司である自分の指示に従わない彼には問題がある」というような前提を持っており、「彼が成果を上げるためには…」と問う人は「部下を成長させ組織の目標を達成するのが上司の役割だ」というような前提を持っていると言えます。すべての思考は、その人が持っている前提によって制御されています。自分が持っている前提を変えない限り、自分の思考パターンを変えることは極めて困難で、ひいては現状を変えることは限りなく不可能と言っても過言ではありません。実に厄介なことは、私たちは、自分が持っている前提がどのようなものなのかを知りませんし、気にしていないということです。

本質を追求するマインドについて、もう少し踏み込んでみましょう。本質を追求するマインドは、次の4つの姿勢(態度)で構成されています。これらのことを意識して習慣化することによって、自分自身の持つ前提・思考の土台を見直しし、未来の可能性を切り開く質問ができるようになります。

 

本質を追求するマインドを支える4つの姿勢

 

① 事象をありのままに受け入れる
 解釈を加えないで、ありのままの状態を認識する。
② 前提を知ろうとする
 相手の発言や行動の源泉となっている「前提」を突き止める。
③ シンプルに考える
 「つまりどういうこと?」を突き止める。
④ 全体像を知ろうとする
 枝葉にのみ気を取られないで、森全体を俯瞰して見る。
⑤ 自分で考える(うのみにしない)
 見聞きした情報をうのみにしないで、自分の頭で考える。

それでは、次回からそれぞれの詳細を説明していきます。

 

ライター


<a href="http://npo-safety.org/expert/yamaguchijunji/">山口 純治</a>
山口 純治

ブランディング、商品プロモーション、製品マニュアル、販売店や社員トレーニング、社内コミュニケーション改善 など、さまざまな情報伝達シーンにおいて「コミュニケーション設計」の支援をしている。
主な活動として、コンサルティング、セミナー、トレーニング・研修、会議やプロジェクトのファシリテーションなどの自立支援活動や、Webサイト・カタログ・パンフレット・動画・マニュアルなどの企画・制作などがある。

 

コラム一覧


第1回 2018年10月30日組織の健全化|経営のエネルギーロスを削減する!
第2回 2018年10月30日コミュニケーションロスはどこで発生するか
第3回 2018年10月30日組織のコミュニケーションレベルを評価する
第4回 2018年10月30日組織に潜在するコンフリクトを把握する
第5回 2018年10月30日コンフリクトマネジメントの実践で組織を活性化する
第6回 2018年10月30日対立を活力に変えるコンフリクトの活用
第7回 2018年10月30日コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する①
第8回 2018年10月30日コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する②
第9回 2019年1月3日コミュニケーションデザイン|引き出す技術を身に着ける
第10回 2019年3月9日コミュニケーションデザイン|引き出す技術(良い質問は未来を開く)
第11回 2019年12月6日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|①事象をありのままに受け入れる
第12回 2019年12月12日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|②前提を知ろうとする
第13回 2020年7月1日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|③シンプルに考える