企業は人なり

2017年1月31日

事務所には、いつものように相談が舞い込みます。

  • 「先日雇用した社員がうつ病で仕事にならないのですが、今から採用を取り消すことは可能でしょうか」
  • 「社員が、ツイッターで会社のよからぬことを書き込んでいるのですが、どうしたらよいでしょうか」
  • 「何度言っても間違えるので、辞めてもらいたい。少なくとも、給与を引き下げたいのだけどできますか」

 もし、皆さんが職場のリーダーであれば、このような問題に日々遭遇しているのではないでしょうか。

 「企業は人なり」とは永遠に言われ続ける普遍的なキーワードです。
 しかし、人は、人でもいろいろな人がいるのが会社です。企業経営者も人であれば、問題を起こす社員も人です。では、会社にフィットする人とは、どのような人なのでしょうか。
 きっと管理職である上司にとって、良い部下とは「忙しい私の時間を作ってくれる人が良い部下であり、私の時間を奪う部下がその反対の部下」といったところでしょう。
 どうしたら、非の打ち所のない優秀な社員、そうとまでいかなくとも普通の社員を採用することができるのか、これから述べていきたいと思います。そこには、紛れもなく採用のノウハウがあるのです。

 

人手不足と入社後のトラブル回避

 

 労務管理には、入口と出口があります。入口とは、採用のことです。このゲートにどのような社員が通過するかで、企業の将来は決定されます。
 まず、名の通った大企業であれば、自然と良い社員は集まってきます。ブランドがあるからです。それは高い労働条件を示唆しますし、そこで働くステータスもあります。ただ、子会社はどうでしょう。関連会社は、・・・となると途端に採用にてこずってきます。

  

(1)人手不足

 人手不足に対応するには、とにかくスピードで乗り切りましょう。優秀な方は、まごまごしていると他社で内定をもらってしまいます。
 入社のエントリーが入ったときに今まで通り、まずは履歴書を送ってください、という対応でよいのでしょうか。履歴書が送られてきたら、その後書類選考を、などという悠長な対応では、このご時世では遅すぎると言わざるをえません。
 スピードをもって対応するためには、履歴書を先に送るというプロセスを省き、面接の日程をすぐに調整し、面接当日に履歴書を持参いただくというやり方で構わないのではないでしょうか。
 なぜなら、すでに転職サイト等のエントリー画面で、その人のプロフィールは確認できているので、期待できそうだと思えば、すぐにお呼びすべきでしょう。もたもたしていると、優秀な人は別の会社で内定をもらってしまいます。
 せっかくエントリーが入っているのに、みすみすご縁を逃してしまうことは、下手なやり方を繰り返すこととなります。
 もっとも、人が潤沢に採用できる会社は、じっくりと履歴書を眺めて当該応募者を面接にお呼びすればよいものと思います。

(2)入社後すぐに健康状態が悪くなる社員がいる

 人手不足なので、猫の手も借りたいという会社ばかりです。だから、健康などノーマークの場合が往々にしてあります。
 しかし、労働契約の最も重要な確認事項は、身心ともに健康的で、毎日快活に仕事ができるかどうかです。
 先日の相談では、製造業において、パンチングマシーンで鉄板に穴を空けている現場で持病の「てんかん」が発症したケースがあります。 そのような現場で、卒倒したときは、命の危険があります。
 だから、健康状態を確認しなくてはいけません。近年のトラブルのなかでは、うつ病に罹患している方が多いことは周知のとおりです。うつ病について云々ではなく、うつ病に罹患していることを知っていて入社いただくのと、知らないで入社いただくのと、労務管理は大きく変わる、ということです。
 そのためには、予め健康状態について確認しなければなりません。

(3)わがままを言う社員が増えている

 ここは、2つの要素があります。
 一つ目は、命令権に応じない社員です。たとえば、他の社員のことも顧みず有給休暇を取らせてほしい、夜勤はやりたくない、家庭の都合があるので、時間外労働は実施しない、転勤について応じないなどなど。
 これらを分析すると、なぜ入社時に確認をとっていなかったのか、ということです。もし、確認ができていれば、入社は見合わせていたはずです。聞かない会社が悪いのです。
 二つ目は、非違行為を繰り返す社員です。すなわち、懲戒要件に該当する行為を繰り返している社員を雇用してしまう点です。
 中途採用者であれば、懲戒に該当する行為を繰り返す社員は、次の会社でも非違行為を繰り返す恐れが往々にしてあります。パワハラ、セクハラ、横領等の非違行為の事例は、枚挙に暇がありませんが、どんなに普通に見える社員でも、採用後に非違行為に及ばないとは言い切れません。
 これらを解消させるためには、採用までのプロセスにおける【面接1回目】の「事前確認書」が重要となるところですが、これについては次回のメルマガでご紹介します。

 

 ところで、採用決定までのプロセスはお持ちでしょうか。
 恐らく歴史のある会社であればあるほど、採用までのプロセスが明確になっているものと思います。100年企業であれば、しっかりとしたフローが確立されているでしょう。しかし、そのフローも仮に100年間変わっていないとしたら、旧態依然とした方法でよいのでしょうか?次回は、どうしたら問題を起こさない社員を雇用できるのか、その採用選考までのプロセスを探ってみます。

ライター


<a href="https://www.npo-safety.org/expert/kinko/">金行 綾</a>
金行 綾

北海道札幌市出身
北海道大学文学部卒業後、大手総合人材サービス会社勤務を経て、株式会社workup人事コンサルティングで社会保険労務士として従事。
人材にかかわる広範囲な知識と経験を活かし、各企業の実態に即した労務管理を行うことを得意とする。
現在は中国国営企業から上場企業まで、幅広い業種・規模の労務管理に携わる。
法的な観点に準拠しつつ、顧客のニーズを最大限に取り入れた就業規則策定、顧客の懐に深く入り込み、徹底した現場主義に基づく労務相談に特に注力している。

コラム一覧


第1回  2017年1月31日企業は人なり
第2回  2017年2月1日採用3か条