コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|①事象をありのままに受け入れる

2019年12月6日

人は、起こったできごとや経験に対して無意識に意味づけをします。「xxが起こるなんて私は運が悪い」「私のことには誰も関心がない」「また失敗した。やっぱり私はダメなんだ」などなど。

人は事実に対して、それぞれ独自の意味づけをしながら世界を見ていて、付与した意味づけこそが、その人の実感している世界となります。そして、その世界はその人の生き方を決定づけていきます。

意味づけとは、できごとに対して自分の解釈を加えることを意味します。起こった事象や体験に対して、嬉しい、悲しい、腹立たしい、許せない、といった感情に乗せて「それはこういう意味だ」「けしからん」「良いできごと/悪いできごと」と解釈を加えるわけです。

 

事象は無味無臭

 

できごとには味も臭いもありません。そこに何らかの意味があるわけではなく、意味は自らが付与しているのですが、それは無意識のうちに処理されるため、自分によって意味づけされた事象が、感情に紐ついて自分にとっての「事実」として認識されます。

ある人は、あらゆる事象に対してネガティブな意味づけをします。そうすると、その人にはいつも(自分の付与した意味によって)不幸なできごとが起こるわけです。一方、ある人は、あらゆる事象にポジティブな意味づけをします。その人にとっては毎日が楽しくて仕方がありません。起こるできごとが同じであっても、どのような意味づけをするかによって、不幸にも幸福にも変わり得るものなのです。

起こったできごとは変えられません。ただし、その意味づけ(解釈)は変えることができます。

決して「ポジティブな意味づけをしよう!」と提案しているわけではなく、「実際のできごと(事実)」と「意味づけされたできごと(解釈)」が存在していることを強調してお伝えすることが目的です。

 

事実と解釈を分離せよ

 

本質を追求するマインドでは、事実と解釈を分離して物事をとらえます。事実をありのままに受け止め、無意識のうちに付与されている解釈を意識して分離するわけです。

といっても、言うほど簡単ではありません。

私たちは「無意識」のうちに解釈を加え、事実として認識し、そして事実のように語るからです。たとえば、「あいつはダメな奴だ/やるきがない」という発言は、なんとなく事実のように語られ、社内で共有されます。しかし、事実は「彼は、今月に入って3回遅刻をした。最近はいつも出勤がギリギリになっている。」だったりします。実は、今月になって奥さまが体調を崩したため、お子さまを学校に送り迎えしていて出勤時間が遅くなっているのかもしれません。私たちは、相手の言動に対して(勝手な)解釈を加えているのですが、問題は私たち自身がそのことに気づいていないと言うことです。

  • うちの会社は雰囲気が悪い(解釈)
  • 同じフロアで仕事をしているのに他部門を手伝わない。
    業務負荷の高い制作1課の山田さんから不満の声が上がっている。(事実)

上の解釈では、「社内の風通しを良くするために“SNS”を導入しよう」という対策を考えるかもしれません。しかし、事実に基づいて検討するなら、手伝わない理由を調査し、「手伝いたくても仕事が分からないため手伝うことができない」という新たな事実が発見され、他部門応援を推進するために、「業務マニュアルや業務の説明動画を整備しよう」となるかもしれません。

このように、事実に基づくコミュニケーションを推進することで、より正しい意思決定を促すことができるようになります。

以下は、「雲・雨・傘」というフレームワークです。

「雲」は事実です。朝起きて窓の外を見るとどんより曇っている。
「雨」は解釈です。「今日は雨が降りそうだ」と事実を分析し解釈を加えます。
「傘」は決断、あるいは解決方法です。「(雨に濡れないように)傘を持って出かけよう」と行動を促します。

行動を促すものが、「雨が降りそうだから、傘を持って出かけよう」というように事実ではなく、解釈であることが分かります。人によっては、「雲が出ている(事実)」「今日は気温が上がらないぞ(解釈)」「コートを羽織って出かけよう(決断)」となるかもしれません。私たちの意思決定は、事実ではなく解釈によってもたらされることが多いのです。

事実と解釈を分離して扱えるようになるためには、起こったこと(事実)と自分が感じたこと・考えたこと(解釈)を分けて書き出す習慣をつけると良いでしょう。最初は、うまく書き出せないかもしれませんが、徐々に慣れてくると思います。

 

ライター


<a href="https://www.npo-safety.org/expert/yamaguchijunji/">山口 純治</a>
山口 純治

ブランディング、商品プロモーション、製品マニュアル、販売店や社員トレーニング、社内コミュニケーション改善 など、さまざまな情報伝達シーンにおいて「コミュニケーション設計」の支援をしている。
主な活動として、コンサルティング、セミナー、トレーニング・研修、会議やプロジェクトのファシリテーションなどの自立支援活動や、Webサイト・カタログ・パンフレット・動画・マニュアルなどの企画・制作などがある。

 

コラム一覧


第1回 2018年10月30日組織の健全化|経営のエネルギーロスを削減する!
第2回 2018年10月30日コミュニケーションロスはどこで発生するか
第3回 2018年10月30日組織のコミュニケーションレベルを評価する
第4回 2018年10月30日組織に潜在するコンフリクトを把握する
第5回 2018年10月30日コンフリクトマネジメントの実践で組織を活性化する
第6回 2018年10月30日対立を活力に変えるコンフリクトの活用
第7回 2018年10月30日コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する①
第8回 2018年10月30日コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する②
第9回 2019年1月3日コミュニケーションデザイン|引き出す技術を身に着ける
第10回 2019年3月9日コミュニケーションデザイン|引き出す技術(良い質問は未来を開く)
第11回 2019年12月6日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|①事象をありのままに受け入れる
第12回 2019年12月12日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|②前提を知ろうとする
第13回 2020年7月1日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|③シンプルに考える