対立を活力に変えるコンフリクトの活用
コミュニケーションロスの原因をつくるコンフリクトを見つけたら、どのように対処すればよいかを説明します。コンフリクトの見積り結果、組織に及ぼす影響の大きさや発生確率が許容範囲だと判断した場合は、あえて対処しないという選択もできます。
■コンフリクトを低減する
コンフリクトには、大別すると「認知」「利害」「感情」の3種類があります。詳細はこちらの記事(組織に潜在するコンフリクトを把握する)をご覧ください。それぞれコンフリクトの低減方法には次のようなものがあります。
・認知のコンフリクトを低減する
認知のコンフリクトとは、保有する情報の差によって生じる対立です。
組織は効率を追求するために機能や役割(階層)で選任化する傾向があります。専任化を推進する結果として部分最適が確立し、各部署や各自が保有する情報に偏りが生じます。認知のコンフリクトを低減するためには、階層間・部署間・担当者間の情報格差を少なくする必要があります。情報過多に起因する通常教務への悪影響があるため、コンフリクト解消によって得られるメリットとデメリットを比較して、どこまで対応するかを決定する必要があります。
・利害のコンフリクトを低減する
立場や役割による価値観や課題認識の差は利害のコンフリクトを生みます。たとえば、経営者は利益追求のために経費を削減したいと考えますが、現場は作業負荷の軽減のために機材を刷新したいと考えます。営業部門は顧客ニーズに応えるために厳しい納期でも対応したいと考えますが、製造部門は残業を最低限にとどめながらも品質を確保するために余裕あるリードタイムを求めます。立場や役割に執着する結果、組織全体の「意思」が見えなくなり、他者との対立が発生するのです。
利害のコンフリクトは、より上位の目標を達成するために立場を超えて共同するための「仕組み」を採用することによって解消できます。
・感情のコンフリクトを低減する
感情のコンフリクトは、過去の確執やネガティブな感情によって発生する対立で、なかなか取り除けるものではありません。アプローチ方法は、できるだけ感情のコンフリクトを起こさせないように、認知・利害のコンフリクトの段階で対応するということになります。しかし、感情のコンフリクトへと発展した場合は、組織全体で、メンタルマネジメントのトレーニングを取り入れることが効果的です。メンタルマネジメントを鍛えることで、自分に対する認識と管理および他者に対する認識と効果的な働きかけできるようになり、感情のコンフリクトを自ら取り除くことが可能になります。
■コンフリクトを活用する
人と異なった意見を持つこと自体は悪いことではありません。それは自然なことです。しかし、自分と異なる意見を否定したり受け入れなかったりするために対立が顕在化します。コンフリクトはうまく活用するとプラスの効果が得られます。たとえば、互いに競い合うことでパフォーマンスが高まったり、異なる意見や価値観をぶつけ合うことで相手への理解が深まったり、立場を超えた議論ができるようになったり、新しい価値観に触れて視野が広がり新しいアイデアが生まれたり…といった効果が期待できます。自分と異なる意見を否定したり、抑え込んだりするのではなく、むしろ多様性を歓迎する環境づくりが望まれます。
コンフリクトを見つけ、積極的にコントロールすることで、組織の成長や問題解決につなげることができるのです。
ライター
コラム一覧
第1回 2018年10月30日 | 組織の健全化|経営のエネルギーロスを削減する! |
第2回 2018年10月30日 | コミュニケーションロスはどこで発生するか |
第3回 2018年10月30日 | 組織のコミュニケーションレベルを評価する |
第4回 2018年10月30日 | 組織に潜在するコンフリクトを把握する |
第5回 2018年10月30日 | コンフリクトマネジメントの実践で組織を活性化する |
第6回 2018年10月30日 | 対立を活力に変えるコンフリクトの活用 |
第7回 2018年10月30日 | コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する① |
第8回 2018年10月30日 | コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する② |
第9回 2019年1月3日 | コミュニケーションデザイン|引き出す技術を身に着ける |
第10回 2019年3月9日 | コミュニケーションデザイン|引き出す技術(良い質問は未来を開く) |
第11回 2019年12月6日 | コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|①事象をありのままに受け入れる |
第12回 2019年12月12日 | コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|②前提を知ろうとする |
第13回 2020年7月1日 | コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|③シンプルに考える |