コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する②
この記事は前回(組織の意思を可視化する①)の続きです。
・現状の可視化
目標だけでなく、現在の状況を可視化することも大切です。実際には現状の正しい把握は容易ではありません。「現状」とは自分の立ち位置から見えるものですので、組織上の立場の違いによって現状のとらえ方は異なります。現状認識は考え方や意思決定の「前提条件」となりますので、異なった現状認識を持つ者どうしが議論をしてもかみ合わないことが多くあります。現状を正しく認識することは極めて難しく、私たちは自分自身のことですら客観的にかつ等身大で評価することは難しいのです。したがって、現状の評価は様々な視点をとおして可視化する必要があります。たとえば、自部門の課題を自部門だけで洗い出すのではなく、他部門からの評価や、クライアントや協力会社からのフィードバックなども取り入れる・・・といった具合に進めます。現状の可視化は、とても面倒な作業ですが、この作業を軽視すると正しい現状認識ができず、目標設定を阻む大きな要因となります。
・課題の可視化
課題とは、解決すべき問題を指します。問題とは目標と現状の差(ギャップ)であり、目標設定と正しい現状認識ができて初めて浮き彫りになります。また、現状認識と同様に問題認識も立場によって異なりますから、第一に、立場を超えた組織共通の課題を可視化する必要があります。組織の課題→部門の課題→チームの課題→個人の課題‥というように、それぞれの課題が連鎖することが望まれます。
・戦略の可視化
戦略と言えば少し大げさな感じがしますが、戦略とは目標を達成するために「何をするか」を表すものです。戦術「どうするか」と比較すると分かりやすいかもしれません。戦略には組織全体の戦略(成長戦略)、各事業の戦略(競争戦略)、各機能(人事、開発、営業、販売、流通…など)の戦略があります。これらの戦略を可視化して関係者と共有しておかなければ、それぞれの現場が個々に場当たり的な活動を展開することになります。現場が何をやっているかを把握することも大変ですし、その結果がどこに向かうのか・どのような結果をもたらすのかを予測することも困難になるでしょう。
・計画の可視化
ここでは戦術と計画を同等に扱って説明します。計画には階層ごとの計画(経営計画、事業計画、機能別計画)、と時間軸を考慮した計画(長期計画、中期計画、年度計画、四半期計画)があります。加えて、目標を達成するために社員を巻き込む方法も計画に落とし込む必要があるでしょう。
計画は、目的地に到達するためにたどるべき順路を示す地図に例えることができます。本来は地図を見ながら、現在地を確認したり、目的地までの距離を測ったり、次のどちらに曲がるかを確認したりして進むべきなのですが、組織においては地図の重要性が現場まで浸透しておらず十分に活用されていないことも多いようです。もし地図が活用されていないとすると、メンバーが目的地を知らない、目的地に向かう必要を感じていない、地図の在りかを知らない、あるいは地図が正確でないため使い物にならない…などの理由が考えられます。
もちろん、地図の情報が古びてしまわないように、現状に合わせて常に刷新していく必要もあるでしょう。
組織の意思を可視化することによって、社内外の関係者と情報を共有して協力したり、振り返ったり、議論を深めたり、新たなアイデアを加えたりできるようになります。
ライター
コラム一覧
第1回 2018年10月30日 | 組織の健全化|経営のエネルギーロスを削減する! |
第2回 2018年10月30日 | コミュニケーションロスはどこで発生するか |
第3回 2018年10月30日 | 組織のコミュニケーションレベルを評価する |
第4回 2018年10月30日 | 組織に潜在するコンフリクトを把握する |
第5回 2018年10月30日 | コンフリクトマネジメントの実践で組織を活性化する |
第6回 2018年10月30日 | 対立を活力に変えるコンフリクトの活用 |
第7回 2018年10月30日 | コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する① |
第8回 2018年10月30日 | コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する② |
第9回 2019年1月3日 | コミュニケーションデザイン|引き出す技術を身に着ける |
第10回 2019年3月9日 | コミュニケーションデザイン|引き出す技術(良い質問は未来を開く) |
第11回 2019年12月6日 | コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|①事象をありのままに受け入れる |
第12回 2019年12月12日 | コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|②前提を知ろうとする |
第13回 2020年7月1日 | コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|③シンプルに考える |