4. 主語と述語の蜜月関係 ~なるべく近くに置いてあげよう~
前回は「主語」と「述語」の重要性を述べました。今回は、主語と述語を正しく対応させるための、あるテクニックをお伝えします。
「主語」と「述語」を近くに置く
ある取扱説明書内に、以下の文がありました。
該当する項目の画面表示は、チャンネルや音声・字幕などを切り替えたときなどに、自動的に数秒間表示されます。
決して悪い例ではありません。前後の脈絡を把握していないので断言はできませんが、何か意図があって、この文なのでしょう。読んでおわかりのように、何らかの「画面表示」が、どんなときに表示されるのかが書かれています。主語「画面表示は」、述語「表示されます」。少し離れていますね。
それでは、主語と述語を近付けてみましょう。
チャンネルや音声・字幕などを切り替えたときなどに、該当する項目の画面表示が自動的に数秒間表示されます。
「こんな操作をしたときに(条件)、こんな表示が出ます(主語と述語)」。明快で、より読みやすくなったと感じませんか?
主語と述語に限らず、「語句(語順)の入れ替え」は、とても便利な方法で、私もよく試みます。主語と述語の関係が見えやすくなりますし、語呂というか、リズムが良くなる効果もあるようです。その結果、読みやすさが向上するのでは?と考えています。
では、取扱説明書を離れて、日常の文を例に挙げてみます。
・ 友人たちは、私からの連絡を受け、さっそく甥の試合を見に来てくれました。
・ B選手は、C選手ができなかったジャンプを難なくこなした。
「友人たちが」、「見に来てくれた」。「B選手は」、「こなした」のですね。主語と述語を近付けてみましょう。
・ 私からの連絡を受けた友人たちは、さっそく甥の試合を見に来てくれました。
・ C選手ができなかったジャンプを、B選手は難なくこなした。
いかがでしょうか。主語と述語の間に長い語句が入っていたら、近付ける方向でリライトしてみてください。
語句(語順)を入れ替える
では、主語・述語にとらわれず、「語句(語順)の入れ替え」について述べてみます。単純な入れ替えでグッと読みやすくなるものもありますが、この例では少し応用力が必要です。伝えたい内容の優先度によって、どのように書くかを考えてみます。
たとえば:
巷で評判のカフェを最初に紹介したのは、同僚のAさんです。
「同僚のAさんが紹介した」を強調したい場合は、上記のようにします。では、「最初に紹介した(誰よりも先に)」を強調したい場合は、どうすればよいでしょうか。
このようにしては?:
同僚のAさんが、巷で評判のカフェを最初に紹介しました。
語順の入れ替えは、自由自在というわけではありません。ですが、文が読みやすくなり、意味を変えないのであれば、トライする価値はあります。テクニカルライティングは、「使える技術」なのです。
【まとめ】
「主語」と「述語」を近付ける!
語句の入れ替えを検討する!
ライター
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