コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する①

2018年10月30日

コミュニケーションロスへの対応には、「可視化」と「共有」技術を活用したコミュニケーションデザインが有効です。
組織が目標を達成するためには、多くの関係者の協力・連携が必要になります。コミュニケーションデザインは、組織の目標達成のために利害関係者と「最適な関係を築く」ことを目的として、コミュニケーションをデザイン(設計)します。

人は見えるものに対しては対処することができます。しかし、見えないものに対処することは極めて困難です。したがって、対処のためには対象物を可視化することから始める必要があります。
つまり、組織の目的、目標、価値観、現状、課題、戦略、計画など「組織の意思」を可視化します。可視化することによって、関係者間で情報を共有したり、振り返ったり、議論を深めたり、新たなアイデアを加えたりできるようになります。

 

■可視化の進め方

 

ここでは、組織の目的、目標、価値観、現状、課題、戦略、計画などを「可視化」することについて説明します。
可視化は第三者と情報を共有するために極めて重要な役割を担っており、考え、意図、意思などを見える形で残すことで、思い込み、忘却、情報格差によるリスクを低減し、後の「言った」「言わない」というトラブル機会を低減する効果があります。

 

・目的の可視化

組織において最も重要なのは「目的」の可視化です。目的とは組織の存在意義を指します。組織(企業)は社会を構成する重要な機関のひとつです。社会に対してどのような価値を提供し、何のために存在しているのかを明確に定義することで、組織活動や目標の方向性が決まります。組織の目的は、組織が選択の岐路に立つとき、何を選ぶかの拠りどころとなります。目的のない意思決定は、俗人的であり一貫性がなく、場当たり的なものになりかねません。創業時から今日までの道のり、現在の環境(内部環境と外部環境)、そしてこれから歩む道を整理しながら徹底的に議論し可視化していきましょう。組織の目的のことを、ミッション(使命)とも言います。使命感を持って活動する強い組織を目指しましょう。

・目標の可視化

目標とは目的を達成するための通過点であり、5つの要素を満たす必要があります。5つの要素とは、「具体的であること」、「測定可能であること」、「達成可能であること」、「組織の目的に沿っていること」、そして「期限があること」です。それぞれの英語の頭文字をとってSMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Related:目的に沿った、Time-bound:期限がある)と呼びます。5つのうちどれが欠けても目標としては不完全なものになります。目標を可視化することで、いつまでに何を達成するのかが明確になります。
普遍的あるいは長期的な目標のことをビジョン(ありたい姿)と言い、組織全体のベクトルを合わせるのに有効です。ビジョンは抽象的な表現を用いることが多いです。

・価値観の可視化

組織において全社共通の価値観を持つことは重要です。価値観とは美学であり、制約であり、組織の意思決定や行動の「指針」および「拠りどころ」となります。なりふり構わず目標達成を目指すのではなく、価値観というルールに基づいて組織は活動します。これにより、その組織「らしさ」が醸成されていき、他社との差別化要因となります。価値観が組織の隅々まで浸透すると、社員は、自分たちの振る舞いとしてふさわしいものと、そうでないものを認識し、常に自分たちらしく振舞うようになります。組織のブランドはそのようにして確立していき、社外の人にも同様に認識されるようになります。

 

ライター


<a href="https://www.npo-safety.org/expert/yamaguchijunji/">山口 純治</a>
山口 純治

ブランディング、商品プロモーション、製品マニュアル、販売店や社員トレーニング、社内コミュニケーション改善 など、さまざまな情報伝達シーンにおいて「コミュニケーション設計」の支援をしている。
主な活動として、コンサルティング、セミナー、トレーニング・研修、会議やプロジェクトのファシリテーションなどの自立支援活動や、Webサイト・カタログ・パンフレット・動画・マニュアルなどの企画・制作などがある。

 

コラム一覧


第1回 2018年10月30日組織の健全化|経営のエネルギーロスを削減する!
第2回 2018年10月30日コミュニケーションロスはどこで発生するか
第3回 2018年10月30日組織のコミュニケーションレベルを評価する
第4回 2018年10月30日組織に潜在するコンフリクトを把握する
第5回 2018年10月30日コンフリクトマネジメントの実践で組織を活性化する
第6回 2018年10月30日対立を活力に変えるコンフリクトの活用
第7回 2018年10月30日コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する①
第8回 2018年10月30日コミュニケーションデザイン|組織の意思を可視化する②
第9回 2019年1月3日コミュニケーションデザイン|引き出す技術を身に着ける
第10回 2019年3月9日コミュニケーションデザイン|引き出す技術(良い質問は未来を開く)
第11回 2019年12月6日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|①事象をありのままに受け入れる
第12回 2019年12月12日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|②前提を知ろうとする
第13回 2020年7月1日コミュニケーションデザイン|本質を追求するマインド|③シンプルに考える