リスクマネジメントの導入実態
先日、専門家の方々とリスクマネジメントについて語り合う機会がありました。そこで関心の高かったテーマは、「日本企業ではリスクマネジメントの効果的な運用が十分に浸透していないのでは」ということでした。「効果的」という表現は言いえて妙であり、リスクマネジメントを導入している大手企業であっても、近年の不祥事などのニュース報道から推察すれば、リスクマネジメントの効果に疑いがあると言わざるを得ない状態です。
下表の「中小企業のリスクマネジメントへの取組に関する調査」によると、中小企業においては、「リスク管理を担当する専門部署がある」は僅か3.9%にとどまり、「リスク管理の担当部署なし」が40.4%となっています。大企業の「リスク管理の担当部署なし」が14.6%という結果が良いか悪いかは置いておいて、中小企業においてはリスク管理体制が十分に整っていないと言えるでしょう。
企業規模別に見たリスク管理に関する体制
リスク管理を担当する 専門部署がある | リスク管理は総務・企画 部門等が兼務している | リスク管理の 担当部署なし | |
---|---|---|---|
大企業 (n=335) | 18.5% | 66.9% | 14.6% |
中小企業 (n=3,246) | 3.9% | 55.7% | 40.4% |
大企業の場合、85%以上の企業が何らかの形でリスクマネジメント体制を整えていることをデータが示していますが、企業の不祥事が連日のようにニュースで取り上げられる現状を見ると、リスクマネジメントが十分に機能しているかどうかという点では若干の疑問が残ります。
もう一つ、大きな疑問があります。
もしかすると、リスクマネジメントの定義が各社で異なっているのではないか、という点です。国際規格が規定するリスクマネジメントの定義(モノサシ)で同じ調査をした場合、どのような結果になるでしょうか。その答えはさておき、スポーツでは参加者がみな同じルールで競い合うように、リスクマネジメントも同じ定義で取り組むことが重要です。
リスクマネジメントの基礎となる「リスク」は、「目的に対する不確かさの影響」と定義されています。その内容については、このコラムの「第1回 リスクって何だろう?」をお読みください。リスクマネジメントの定義については、別の回でご紹介します。企業や業界ごとの独自の定義ではなく、国際的な定義を土台に据えて事業展開を図ることを改めてお勧めします。
ライター
コラム一覧
第1回 2017年12月11日 | リスクって何だろう? |
第2回 2018年01月25日 | リスクマネジメントは価値を創造する |
第3回 2018年02月20日 | リスクマネジメントの導入実態 |
第4回 2018年10月23日 | リスクマネジメントのプロセス |